自然治ゆ力の不思議
人間に本来備わっている自然治ゆ力の不思議さを最もわかりやすく教えてくれるのは、外傷が治ゆしていくプロセスです。
どんな人も、手や足に小さな擦り傷をつくった経験はあると思います。
道で転んだり、家具の角に手足をこすったりして皮膚を擦りむいてしまう。
ジワッと血がにじんできて、ヒリヒリと痛みます。
その程度の傷なら、ツバをつけて放っておいても、無意識のうちに四、五日で治ってしまっています。
傷口にツバをぬるというのも、実は理にかなったことなのです。ツバには殺菌作用があるのです。
これは汗も同じです。汗は、上がった体温を下げるために出るものですが、同時に皮膚の殺菌作用もはたしているのです。
もちろん、こうした殺菌作用も人間の自然治ゆ力です。ついでにいえば、気温の高いところでは汗を出し、気温が下がれば皮膚の毛穴を縮めて寒さに対抗しようとする。
環境の変化に対するそうした身体の防衛反応なども、広い意味で人間の自然治癒力の働きだといえるのです。
皮膚の擦り傷の話に戻りましょう。
傷口にジワッと血がにじんできます。少し深い傷なら、皮膚に流れるくらい血が出てくるでしょう。
その血には、傷口から入ろうとする雑菌を防ぐための白血球などの細胞が含まれているのです。
彼らが雑菌と闘っているうちに、血は凝固してかさぶたとなっていきます。
かさぶたは、いわばすり切れた皮膚の一時的な代わりをしているのです。
やがて傷口がかゆくなってきたころ、ポロっとかさぶたは取れてなくなります。
すると、その下から新しい皮膚に被われたかつての傷口、つまり治ってしまった傷口が現れます。
人間の肉体は、ある程度のレベルでは再生する能力があるのです。
このとき、その擦り傷を治したのは何だったのかといえば、自分自身の力であるとしかいえません。そうした働きが、自然治ゆ力なのです。
切断されてしまった手足までを再生する能力はないにしても、骨折した骨が繋がるのも、潰瘍で開いた胃の穴が塞がっていくのも、手術で縫い合わせた内臓や皮膚が治癒していくのも、みんな自分のもっている自然治ゆ力の働きです。
これはなにもケガに限ったことではありません。風邪やその他の病気でも同じです。
風邪の特効薬を発見した人はノーベル賞ものだといわれるように、風邪を治す薬は、いまだに存在しないのです。
いま売られている「風邪薬」は、せきや発熱など風邪の症状を抑える作用しかありません。
風邪を根元的に治しているのは、自分自身の治癒力なのです。
一般的に、感染症に対して抵抗していく力を「免疫」といいますが、この免疫機能も、人間の自然治ゆ力の大きな要素なのです。


















